曼珠沙華どれも腹だし秩父の子 金子兜太 評者: 森下草城子

 毎年、曼珠沙華が咲く時期になると、必ずこの作品を思い出す。秩父という山峡、その山間の地が醸し出す景を直に捉え得ている。明るく、開けっ広げて屈託のない子供の日常、自然の申し子の世界とでも言いたいものがある。秩父という風土の中で育まれてきた子ども達の剥き出しの姿を感じる。着衣がはだけて、腹が丸出しになっても無頓着に遊ぶ子どもの世界である。この作品に触れて、沢木欣一は「戦時下であるから秩父の子は弊衣をまとい、栄養不良で腹ばかり大きいのである。」と述べているが、終戦前後の食料難の時期を重ねて捉えていた。
 
評者: 森下草城子
平成15年10月2日