銀座より帰りて寒し材木座 鈴木六林男 評者: 山崎 聰

 銀座はもちろん東京の銀座、材木座は鎌倉の材木座であろう。上京し、銀座で知人と歓談して、寒夜を宿のある鎌倉に帰ったのだろうか。ただそれだけのことなのだが、銀座と材木座の見事な対応に息を呑む。日本の繁栄の象徴とも云える近代的な街銀座と、古都鎌倉の寒い海岸。そこには、自然、歴史、文化の大きな落差がある。ここで云う“寒し”は、単に冬の寒さという事実を超えて、そういう落差の大きさからくる“寒し”なのである。
 二つの固有名詞がこんなに響き合い、呼応し合って一句の中に坐っている句を、ほかに知らない。
 
評者: 山崎 聰
平成17年6月30日